2011年02月16日

額裏(がくうら)

額裏に 粋を纏ひし 男前

「額裏」とは

 師羽織の裏地に使う布を「羽裏」といいますが、中でも男物の

羽織の裏が額縁の中の一枚の絵のようになっているものを

「額裏」といいます。

今でもダンディズムの証として背広の裏地に凝るように、男の着物では

長襦袢や額裏に凝るのが趣味人の定番とされました。

 

そぞろ歩きに里通ひ 艶な裏地を 道連れに

「羽織の起源と遊びの歴史」

羽織の起源は安土桃山時代、戦国武将が戦場での防寒着として

鎧の上から陣羽織を着用したことに始まります。

やがて日常の防寒着となり、紋付羽織袴は正装に。

歌舞伎や演芸、あるいは色街へ、遊び上手な男の羽織には

裏地にも遊び心が潜んでいたのです。

 

脱ぐときに ちらりと見せる それこそがお洒落

「額裏の見せ場」

(軽妙酒脱)の(酒脱)とは、さっぱりして俗気のないこと、

あかぬけていることの意味で、漢字の「脱」は「のびやかなさま」を

表します。出かけた先でするりと脱いだ羽織の裾から、ちらりと覗く

裏模様。それこそが、粋なさまを表す「洒落」にも通じるのです。

 

衣擦れの 音の向こうに 別世界

「額裏の手法」

羽裏に使われる素材は羽二重、ちりめんなどの正絹が中心で、

表現技法は手描き染め、型染め、織りのほか、刺繍や箔を施した

ものなど、実に様々です。描かれる図柄も花鳥や波、吉祥といった

伝統的な文様をはじめ、山水画や武者絵など大胆な構図も用いられました

 

銀鼠も 古代紫も 色あせることなく

「額裏の色」

いにしえより和装では「襲の色目」が重んじられ、女性の装束では

衣と衣、男性用では表と裏の配色が季節によって定まっていました。

一方、伝統や格式にとらわれない額裏は、表地とのコントラストも

さることながら、文字通り自由で多彩ないろ遣いが目を引きます。

 

一見無口 実は雄弁 その意外性も 男の魅力

「男の羽織も女性にも」

華やかな文様をあしらった女性用の着物にひきかえ、男性用の着物は

色柄とも地味に思われがちですが、中には驚くような額裏のものも。

表地からは想像できない華麗さと意外性は、女性の目にも魅力的に

映るはず。

きものギャラリー ふくしの冊子より抜粋しました。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。